武田薬品工業株式会社(2013/4/1~2014/3/31)
売上高 | 経常利益 | 当期純利益 | 総資産額 | 自己資本比率 |
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1,691,900 | 130,700 | 90,300 | 4,569,144 | 63.0% |
武田薬品工業の2014年度の決算は売上1兆6919億、当期純利益903億円。903億円という数字はアベノミクスの波に乗って今期過去最高益を叩きだした三井不動産の純利益の約2倍相当にあたる驚異的な数字である。
しかし、武田薬品工業の業績がピークだった2007年(純利益3358億円)と比べると73%減少している。
この状況を打破すべく武田薬品工業が打ち出した中期成長戦略が「プロジェクトサミット」だ。2017年までに累計1000億円以上の経費削減を目的とした「プロジェクトサミット」の具体的な施策には、広告代理店の削減・手数料の減額交渉、包装・原材料の集中購買・グローバル購買、業務効率の最大化を目指した人員リダクションなどが盛り込まれている。経費削減を進める一方で研究費、M&A、グローバル人材の確保などに費やす費用は現状の水準を維持していく方向性のため、上手く歯車が噛み合えば大幅な業績アップが狙える施策だといえる。
「プロジェクトサミット」が功を奏し、販管費を大幅に削減できた今期の営業利益は前年度よりも743億増益の1393億円となっている。この数字だけ見ると両手放しで喜びたいところだが武田薬品工業には大きな課題がる。その課題とは大型新薬開発の目処が立っていないこと。近年の武田薬品工業はM&Aやグローバル販路の拡大で売上こそ伸ばしているものの営業利益は右肩下がりだった。「プロジェクトサミット」は右肩下がりの営業利益を上げるための苦肉の策という見方もできる。2010年前後に主力薬品の特許が切れた武田薬品工業にとっていま一番大事なのは超大型薬を世に出すこと。しかしその目処は今のところたっていない。
武田薬品工業から超大型薬が生まれない背景にはバイオ医薬品の躍進がある。一昔前まで主流だった低分子医薬品の分野では経験も実績もある武田薬品工業に優位性があり、ヒット新薬もコンスタントに出ていた。しかし、より高度な技術を必要とするバイオ医薬品の分野においては武田の研究所といえども容易に新薬を生み出すことが出来ないというのが現状である。バイオ医薬品の開発は研究者個人の能力に左右される部分が大きい為、マネジメントや投資だけでどうにかなる世界ではないという訳だ。そのため近年では、大手が開発力のあるバイオベンチャーを買収するという流れが生まれている。
武田薬品工業には新薬の開発以外にも、増えすぎた外国人経営幹部と生え抜き人材の調和、万能MRを廃止して専門分野特化型MRを配置するという営業体制の変更、広告表現を巡る各国行政との意見の相違など、解決すべき問題がいくつかある。そんな状況を象徴するかのように創業家一族や旧幹部らは2014年2月に「タケダの将来を憂う会」を結成している。
この前途多難ともいえる状況で社長を務めているのは武田薬品工業230年の歴史上はじめての外国人社長であるクリストフ・ウェバー氏。非創業家の現会長である長谷川 閑史氏が中心となり推進した経営のグローバル化が吉と出るか凶と出るか?外国人社長のウェバー氏はV字回復を果たした日産カルロスゴーン氏になれるのか、それともソニー没落を招いたハワードストリンガー氏の二の舞になるのか?今後も目が離せない状況である。